頑張れる人ほど筋肉がつかない!?
突然ですが、皆さんは自分に合った睡眠時間を確保できていますか?
私の場合は色々試した結果、7時間がちょうどいいようです。
しかし忙しい時期や自分でやらなければいけないことが増えてくると睡眠時間を削りがちになりますよね。
【世界各国の1日平均睡眠時間】
上のグラフを見てわかるように日本は断トツの最下位です。
「え?7時間20分も寝れてるじゃん」と思った方、このグラフは平均値です。
一般の方の感覚に近い中央値にすると約6.5時間になります。
特に働き盛りの30代から50代の睡眠時間は6.5時間よりさらに少ないですから、まさに「不眠大国日本」なわけです。
そこで今回はパーソナルトレーナーとしてカラダ作りの観点から見た睡眠の重要性をお話ししたいと思います。
「カラダ作り」と「睡眠」
「カラダ作り」と「睡眠」というと多くの方が成長ホルモンと関係していると思われます。
確かに成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されます。
しかし最近の研究で成長ホルモンは主に成長期の骨の発達に影響していて筋肥大にはあまり関係ないと考えられています。
ではなぜ睡眠がカラダ作りに重要なのか?
それは筋肥大の要、男性ホルモンの「テストステロン」レベルに影響するからです。
米国の研究では20代男性に5時間睡眠を1週間続けてもらったところ、
1週間後、テストステロンが15%低下したというデータがあります。
さらに35歳を過ぎると、男性も女性も体内のテストステロン濃度が着実に低下し始め、
毎年1%の割合でテストステロンが減少していきます。
筋力トレーニングをするとテストステロンレベルが高くなりますが、もっとも活発になるのは深夜から明け方。
つまり、夜寝ているときです。
睡眠不足や質の悪い睡眠が習慣になると、筋力トレーニングを行っていてもテストテロンの正常な分泌が保てず、確実に減っていってしまうのです。
質の良い睡眠を得るためには?~眠トレのススメ~
毎日7時間から8時間の睡眠時間を確保できるのが最善になりますが、やはりそうも言っていられない時もあります。
そこで普段から睡眠の質を高めておくことが大切です。
ルールやルーティンを決めて心地よくスムーズに眠れるようにする。
まさに睡眠トレーニング「眠トレ」です 笑
眠トレとして僕なりに意識しているポイントは以下になります。
①食事・栄養
②入浴
③寝具・環境
④昼寝
⑤イメージルーティン ※番外編
一つずつ説明していきたいと思います。
食事・栄養
食事は規則正しく食べるのが基本になります。
朝食を摂ることで胃腸が働き、体内時計のリズムが整います。
反対に、夜遅い時間に食事を摂ると胃腸が休まらず、深部体温が高いままとなって睡眠の質が低下する可能性があります。
食事の量は全食事ほぼ均等か、夕食を少なめにすることを推奨しています。
夕食では刺激物やカフェイン、消化の悪いものは避けましょう。(寝酒もNG)
栄養的には特に3種類のアミノ酸を意識して摂り入れています。
トリプトファン
トリプトファンは9種類ある必須アミノ酸のうちの1つで、
感情を落ち着かせるために働くセロトニンと、生体リズムを整えるメラトニンの原料となります。
食べ物から摂取したトリプトファンは、体内でセロトニンへ合成されます。
そして、セロトニンの一部は、夜になると今度はメラトニンへ変わるのです。
メラトニンになるまでには時間がかかるので朝食にトリプトファンを摂取するといいでしょう。
トリプトファンを多く含む食材
牛乳やバナナ、鶏むね肉、チーズ、大豆製品、牛肉、ナッツ、カツオ、マグロ、卵など。
GABA
次に重要なアミノ酸が、GABAです。
脳や脊髄で働く抑制系の神経伝達物質で、興奮を抑え、心身をリラックスさせる働きがあります。
実際、睡眠薬の多くは脳内でGABAの作用を強める物が多く、このことからも、いかに不眠に効果が高いかがわかるでしょう。
GABAを多く含む食材
カカオ(高カカオチョコレート)、玄米、トマト、雑穀類、ブロッコリースプラウトなど。
グリシン
三つめの重要なアミノ酸が、グリシンです。
私たちは入眠する際に、体の内部の温度である深部体温を下げることによって、心地よい眠りにつくことができます。
グリシンには、この深部体温を下げる働きがあるのです。
グリシンを多く含む食材
エビ、ホタテ、イカ、カニ、カジキマグロなど。
紹介した食材はよく食卓に並ぶものだと思うので特別大変なことはないと思いますが、
意識しているかしていないかでかなり変わってくる部分だと思います。
不眠にお悩みの方は、これらの食材を積極的に摂り入れてみてはいかがでしょうか。
もっと手軽に摂りいれたい方はこちらのサプリメントも有効です↓
入浴
今年発表された米テキサス大学のShahab Haghayegh氏らの研究で、就寝の1~2時間前に温浴したり温水シャワーを浴びたりすることで、
入眠までの時間が短縮し、全体的な睡眠時間が延長することが明らかになりました。
やり方は簡単で、
就寝の1~2時間前に40~42.5度のお湯で10分~15分、入浴したりシャワーを浴びたりする。
だけです。
ただし、お湯が熱過ぎたり冷た過ぎたりすると逆効果となり、睡眠に悪影響を与えてしまいます。
また、入浴のタイミングも重要で、就寝の約1~2時間前以外の時間帯に入浴すると、体温の日内変動が乱れる可能性があります。
早めに夕食を済ませ、ゆっくりお風呂に入って寝るというシンプルかつ実用的な方法。
当たり前の方もいらっしゃると思いますが、普段シャワーだけの方は湯船に浸かるようにすると効果的ですよ。
寝具・環境
僕は20代の頃、「男は固いせんべい布団で寝るのがかっこいい」と訳の分からないこだわりを持っていました 笑
今考えると、確かに少し固い方がカラダには良いのですがやはり固すぎは良くないですね。
寝起きの身体が痛いし、朝から疲れていましたから。
人間の身体は常に動いていることが自然で、長時間同じ姿勢でいると身体のバランスが崩れ、正常な動作が出来なくなっていきます。
ですので睡眠でも一番大切なのは、寝返りが楽にできる状態だと考えています。
となるとマットレスは高反発と低反発の間、枕は幅広で自分に合った高さのものが理想ではないでしょうか?
また、冬になると掛布団を使用しますが、重いものだとやはり寝返りがしにくくなってしまうので軽くて温かいものをオススメします。
こちらは僕が実際使用しているオススメの寝具です。
枕は高調節が可能、マットレストッパーは今お使いの敷き寝具の上に重ねるだけで快眠空間になります。
羽毛布団もマザーグースダウンでとても暖かいので毛布はいらないかもしれません。
朝起きて体がだるいといった方は是非お試しください。
また入浴後、眠る1〜2時間前からは、照明をやや暗めにして過ごすと寝付きがよくなります。
睡眠中は暗いほどいいですが真っ暗で寝られない方は豆電球やフットライトだけにしましょう。
昼寝(パワーナップ)
寝不足にならないように注意したとしても、どうしても睡眠時間が確保できない場合は「昼寝」を活用することが非常に効果的であると、様々な研究から示唆されています。
とても効果的なので僕の場合は寝不足でなくても毎日昼寝を取り入れています。
ちなみにこの昼間の短時間睡眠のことを「パワーナップ」(積極的仮眠)と呼びます。
☆パワーナップに関する研究と活用
・4時間睡眠で寝不足の者では、翌日の昼に30分と昼寝をするかしないかで、
眠気、短期記憶能力、2mスプリント、20mスプリントの結果が良くなった。(Waterhouse et al 2007)
・対象者を2時間睡眠にさせ、昼寝を行うことにより、ストレスの指標であるカテコールアミンの増加が抑えられ、
一時的に低下した免疫力が元のレベルに戻った。(Faraut et al 2015)
その他にもNASAの睡眠研究では昼に26分間の仮眠で、認知能力が34%、注意力は54%も向上したという報告もあります。
しかしこの昼寝は、長すぎると逆に眠気が増したり、スッキリしない目覚めになってしまうことがあるため、
15分~30分で行うことが重要です。
さらに昼寝前にカフェインを摂取すること、昼寝後に軽い運動をすることで、目覚めが良くなることが示されています。
昼休み、授業間、会社での休憩時間にパワーナップを行えば午後の仕事、勉強、運動効率は大きく改善されるでしょう。
断言します。
イメージルーティン ※番外編
僕はベットの中に入って入眠するまでに必ず行うイメージルーティンがあります。
これは根拠も何もありませんが毎日行っていることなので参考までにご紹介します。※雑談程度にお読みください
①背伸び等の軽いストレッチ
②今日1日無事に過ごせたことに感謝する
③目を閉じて心の中で家族や大切な方を思い、感謝の言葉を掛ける
④海の底やスカイダイビングで下に落ちていくイメージをする
⑤寝る
なんじゃそりゃですよね 笑
本当に感覚なので一つ一つに特に深い意味はありません。
ただ毎回入眠時に行っているイメージルーティンなのでやらないと気持ちが悪いし、逆にやるとスッと眠れる安心感があるといった感じです。
予定通りにいく日、予定外のことが起きる日、生きていれば精神状況やスケジューリングも日々変化します。
なので大事なのは気持ちや心を睡眠に向けて同じ場所に戻すことかなと思っています。
…すごい曖昧ですが心理分析が得意な方いたら教えてください 笑
まとめ
2017年に「睡眠負債」という言葉が新語・流行語にノミネートされていましたが、
自分に合った睡眠時間がわからないと知らぬ間に睡眠負債が溜まっていき破産=体調不良が続き、発病することになりかねません。
今回はトレーナーとしてカラダ作りの観点から見た睡眠の重要性をお話ししましたが、
睡眠不足は筋肥大以外にもガンやアルツハイマーの発症を高め、肥満の原因にもなります。
タバコと同じで睡眠不足には害しかないのです。
毎日頑張って働いて、質のいいトレーニングを行って、完璧な栄養を摂っているのに思うように筋肉がつかない方、
真の原因は睡眠にあるかもしれません。
原著論文はこちら
Haghayegh S, et al. Sleep Med Rev. 2019 Apr 19. [Epub ahead of print]
Sleep Med. 2018 May 12;48:117-126. doi: 10.1016/j.sleep.2018.04.012.
Slow-wave sleep and androgens: selective slow-wave sleep suppression affects testosterone and 17α-hydroxyprogesterone secretion.
Ukraintseva YV, Liaukovich KM, Polishchuk АA, Martynova ОV, Belov DA, Simenel ES, Meira E Cruz М, Nizhnik АN.